咽頭・食道・胃・十二指腸の疾患
咽頭・食道・胃・十二指腸の疾患
胃カメラ検査で精密検査が可能です

胃酸を含む胃の内容物が食道へ逆流し、食道の粘膜に炎症を起こす病気です。食道には胃のような粘膜バリアがないため、胃酸にさらされることで炎症やびらん(粘膜のただれ)が生じます。日本では食生活の欧米化や高齢化、ピロリ菌除菌の普及などを背景に、近年増加傾向にある疾患です。
逆流性食道炎の主な原因は、食道と胃の境目にある下部食道括約筋の機能低下です。過食・肥満・猫背・食後すぐに横になる習慣などが括約筋の機能を低下させ、胃酸の逆流を引き起こしやすくします。また、食道裂孔ヘルニア(胃の一部が横隔膜の上にはみ出した状態)も原因のひとつです。主な症状は胸やけ(みぞおちから胸にかけての焼けるような不快感)、呑酸(酸っぱいものが喉まで上がってくる感覚)、げっぷ、喉の違和感、慢性的な咳などです。症状は食後や就寝時に悪化しやすい傾向があります。
診断には胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)が有効で、食道粘膜の炎症やびらんの有無を直接確認することができます。症状だけで診断し、胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬・P-CABなど)を処方する場合もあります。治療は主に薬物療法と生活習慣の改善が柱です。薬物療法では胃酸の分泌を抑える薬を使用し、多くの場合で症状の改善が期待されます。生活習慣の改善としては、食べ過ぎを避ける、食後すぐに横にならない、肥満を解消する、喫煙・飲酒を控えるなどが重要です。
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の粘膜に生息する細菌です。胃の中は強い酸性(胃酸)のため本来は細菌が生息できない環境ですが、ピロリ菌はウレアーゼという酵素を分泌してアンモニアを作り出し、胃酸を中和することで生息することができます。感染すると慢性的な胃の炎症(慢性胃炎)を引き起こし、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃がんへと進展する可能性があることが知られています。
ピロリ菌は主に幼少期(5歳以下)に感染するとされており、衛生環境が整っていなかった時代に幼少期を過ごした中高年層で感染率が高い傾向があります。感染経路は主に口から口への感染(経口感染)とされています。ピロリ菌感染は自覚症状がないまま進行することが多いですが、慢性胃炎による胃もたれ・食欲不振・みぞおちの不快感などが現れることがあります。
診断は内視鏡を使う方法(迅速ウレアーゼ試験・鏡検法・培養法)と内視鏡を使わない方法(尿素呼気試験・血中抗体法・便中抗原測定法)があります。状況に応じて適切な検査方法をご提案します。除菌治療は抗菌薬2種類と胃酸を抑える薬の計3種類を7日間服用する方法(1次除菌)が標準的です。除菌後は判定検査を行い、成功しなかった場合は抗菌薬の種類を変えた2次除菌を行います。除菌後も定期的な胃カメラによる経過観察が重要です。
胃の粘膜の一部が隆起し、イボ状に盛り上がった状態を胃ポリープといいます。胃カメラ検査で偶然発見されることが多く、自覚症状がほとんどない場合が多いです。胃ポリープにはいくつかの種類があり、種類によってがん化のリスクが異なります。
胃ポリープの代表的な種類は以下の通りです。
胃粘膜の炎症や刺激によって上皮細胞が過剰に増殖したポリープです。ピロリ菌感染との関連が指摘されており、除菌後に縮小・消失することがあります。がん化のリスクは比較的低いとされています。
胃の上部(胃底部)に多く見られるポリープで、胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬)の長期服用が関与しているとされています。がん化のリスクは非常に低いとされています。
頻度はまれですが、がん化する可能性があるポリープで、定期的な観察や切除が検討される場合があります。
自覚症状はほとんどありませんが、大きなポリープが出血を起こすと便潜血陽性や貧血が現れることがあります。
胃カメラ検査でポリープを発見し、必要に応じて組織の一部を採取して病理検査(生検)を行います。ポリープの種類・大きさ・形状をもとに、経過観察か切除かを判断します。切除が必要な場合は内視鏡的切除術を行うことができます。
胃の粘膜から発生するがんです。日本では罹患数・死亡数ともに多いがんのひとつですが、早期に発見できれば内視鏡治療で根治できる場合があります。定期的な胃カメラ検査による早期発見が重要です。
胃がんの主な原因はピロリ菌感染とされており、ピロリ菌による慢性胃炎・萎縮性胃炎が長期間続くことでがんが発生しやすくなるとされています。その他、塩分の多い食事・喫煙・飲酒なども危険因子として知られています。早期胃がんは自覚症状がほとんどなく、進行すると胃痛・みぞおちの不快感・食欲不振・体重減少・吐き気・黒い便(タール便)などの症状が現れることがあります。症状が出た段階では進行していることもあるため、定期的な検診が大切です。
診断には胃カメラ検査が最も有効です。胃カメラで病変を発見し、組織の一部を採取して病理検査を行います。早期胃がんの場合は内視鏡的切除術(ESD・EMR)で根治できる場合があります。進行がんでは外科手術・化学療法・放射線治療などが検討されます。ピロリ菌感染がある場合は除菌治療が推奨されます。
胃や十二指腸の粘膜が深くえぐれた状態を潰瘍といいます。胃の粘膜を守る防御機能とそれを破壊する攻撃因子(胃酸など)のバランスが崩れることで生じます。
胃・十二指腸潰瘍の主な原因はピロリ菌感染と、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:鎮痛剤など)の使用です。ピロリ菌感染による胃粘膜の炎症が潰瘍の発生を促します。その他、ストレス・喫煙・飲酒なども悪化因子として挙げられます。主な症状はみぞおちの痛みや不快感です。胃潰瘍では食後に痛みが強くなることが多く、十二指腸潰瘍では空腹時や夜間に痛みが現れやすい特徴があります。出血を伴う場合は黒い便(タール便)・吐血が見られることがあります。
胃カメラ検査で潰瘍の部位・大きさ・出血の有無を直接確認します。組織を採取してピロリ菌感染や悪性腫瘍の有無を調べます。治療は胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬・P-CABなど)と粘膜保護薬による薬物療法が中心です。ピロリ菌感染がある場合は除菌治療を行います。出血が見られる場合は内視鏡的止血処置を行います。
逆流性食道炎などによる胃酸の慢性的な逆流によって、食道の粘膜が本来の扁平上皮から胃や腸に似た円柱上皮に置き換わった状態をバレット食道といいます。食道腺がん(食道に胃がんに似たがんが発生する)へと進展するリスクが高まるため、前がん病変として重要視されています。
バレット食道の最大の原因は胃食道逆流症(逆流性食道炎)です。胃酸が繰り返し食道を傷つけることで、傷ついた粘膜が修復される際に本来とは異なる細胞へ置き換わる「腸上皮化生」が起きます。肥満・喫煙・高脂肪食なども発症リスクを高める因子として知られています。バレット食道そのものは直接的な症状を引き起こすことは少なく、多くの場合は胃カメラ検査で偶然発見されます。逆流性食道炎の症状(胸やけ・呑酸など)を伴っている場合があります。
胃カメラ検査で食道粘膜の変化を確認し、組織の一部を採取して病理検査を行うことで診断します。バレット食道自体に対する特異的な治療はなく、逆流性食道炎の治療(胃酸抑制薬の内服・生活習慣の改善)を行いつつ、定期的な胃カメラ検査で経過を観察することが重要です。がんへの進展がある場合は内視鏡的切除術が検討されます。
胃カメラ検査や血液検査などで明らかな異常が見つからないにもかかわらず、みぞおちの痛みや不快感・胃もたれ・食後の膨満感・早期満腹感(少量の食事でもすぐに満腹になる感覚)などの症状が慢性的に続く状態です。「胃が弱い」「胃の調子が悪い」と感じている方に多く見られます。
機能性ディスペプシアの原因は完全には解明されていませんが、胃の運動機能の異常・内臓知覚過敏(胃が刺激に対して過敏になっている状態)・ストレスや心理的要因・ピロリ菌感染などが複合的に関与していると考えられています。
主な症状はみぞおちの痛み・灼熱感、食後の胃もたれ・膨満感、早期満腹感、吐き気などです。症状はストレスや食事内容によって悪化しやすい傾向があります。
他の疾患(胃潰瘍・胃がんなど)を除外するために胃カメラ検査を行い、異常がないことを確認した上で診断します。ピロリ菌感染がある場合は除菌治療が症状改善につながることがあります。治療は症状に応じて胃の運動機能を改善する薬・胃酸抑制薬・漢方薬などを使用します。生活習慣の改善(規則正しい食事・ストレス管理・十分な睡眠)も重要です。
アニサキスは魚介類に寄生する寄生虫(線虫)の一種で、アニサキスの幼虫が寄生した魚介類を生または加熱不十分な状態で食べることで感染します。アニサキスが胃の粘膜に侵入しようとすることで激しい腹痛を引き起こします。
アニサキスはサバ・アジ・サンマ・イカ・サーモンなどの魚介類に多く寄生しています。魚が死亡すると内臓から筋肉へ移行するため、鮮度の高いうちに内臓を除去することや、適切な加熱処理(70℃以上)や冷凍処理(-20℃以下で24時間以上)が予防に有効とされています。主な症状は食後数時間以内に起こる突然の激しいみぞおちの痛みと吐き気・嘔吐です。アレルギー反応を起こすこともあります。
問診(生魚を食べた履歴)と胃カメラ検査で診断します。胃カメラでアニサキス幼虫を確認し、鉗子(かんし)を用いて摘出します。摘出することで多くの場合、症状は速やかに改善します。アニサキス症が疑われる場合は、早めに消化器内科を受診されることをおすすめします。
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